─ そのように椅子に座ったり横になってリラック スをしているときに、アイデアが浮かんできたり しますか? そうとも言い切れません。しかし、アイデアはい つ浮かんでくるかわからないもので、ソファでは 仕事をしているケースの方が多いと感じます。実 際には(写真のように)リビングや、出張先のホ テルのラウンジなどでくつろいでいます。Wi-Fi さえ入っていれば仕事はできますし、ニュースも 見ることができます。こういうときはプレゼンテー ションの準備をしているケースが多いです。 ─ 仕事をするにもリラックスをするにも、あまり 環境にこだわらない? そうですね。年間 60 日はスキーをすることを目 標にしているのですが、そのために仕事はどこで も取り組めるようにしています。例えばニュージー ランドに行くとおよそ 3 時間の時差がありますが、 現地では午前中からスキーをし、午後4時に宿へ 戻ると、日本時間の午後1時に行われる会議にス カイプで参加することが出来ます。 ─ スキー以外の趣味はありますか? リフレッシュする際もスキーに行きますので、そ れ以外の趣味と言われるとなかなか難しいです。 今年は 7 月から一ヶ月間ニュージーランドへ、8 月からはチリへ行きますが、そのためにこの 5 月 と 6 月は目一杯仕事をする予定です。雪がある月 はとにかく滑らせてもらって、雪がない月は仕事 をするというのが基本です。しかし、だからといっ て、雪がなくスキーができない時期にストレスが 爆発するということはありません。 ─ では普段、ストレスとはどう向き合っているの ですか? これは社員も知っていることであるとは思うので すが、私には好きな会議と嫌いな会議というもの があります。もちろん、仕事なので出席すること もありますが、できる限り嫌いな会議は出ないと 決めているのです。「3ない主義」といって「出た くない会議には出ない」「会いたくない人には会わ ない」「行きたくない場所には行かない」というも ので、これを一生懸命実践しております。私の出 席が必須の案件は別ですが、それ以外のものは別 の方にどんどん依頼するようにしています。その 基準の一つが、自分にとって 楽しい と思える かどうか。これを実践するだけでも意外にリラッ クスができているので、どうしても息抜きをしな ければならないという感覚はありません。もとも と、我慢して何かをするということが非常に苦手 ということもあるのかもしれません。 ─ つまり、あまりストレスを感じないのでしょう か? 正確には、(ストレスを)自然に避けてきたという ことかもしれないですね。変に自分を追い込むと いうことはなく、もともとそういう性格なのでは ないかなと思っています。 スキートリップこそが究極の癒しであり刺激 ─ インターネットの反応などは見ますか? 気にならないので見ていません。トラブルが起きた時も、バタバタ感が妙に楽しいといいますか、普段とちが うルーティンが起こっている気がして、それほど嫌ではありません。会社が運営している複数のリゾートがあり、 その各リゾートが様々な状況にあるわけで、中には現在業績が良くない施設もあります。しかし、そういう時 の方がやる気が出るのです。だからふいに、とてもやる気が出てきたなと思う瞬間があるのですが、そういう ときはだいたいトラブルが起きていたりします。 ─ なんだか不思議ですね(笑)。ピンチをピンチ と思わないのですかね? ピンチであるとは思っています。思ってはいます が、そのピンチに対してみんなで立ち向かってい くというところにエキサイティングなものを感じ るのだと思います。 ─ ではご自身がストレスレスだなと感じる場所は ありますか? 今年の 2 月にロンドンでプレス発表会、その後日 にモスクワで講演があったのですが、その間の 4 日間を頂いてオーストリアでスキーをしました。 海外にも良いホテルが多くあるのですが、向こう の素敵なホテルでくつろぐ時間はとても有意義で した。天候が悪いと滑ることができず、一日中ホ テルに滞在することになるわけですが、ホテルで 過ごす時間はストレスレスに感じました。 ─ 旅がもたらす究極の癒しとは何だと思います か? よく転地効果といいますが、旅によって色んな場 所に訪れることで自分の発想も変わったり、リラッ クスできたり、そういった感覚はあるのかもしれ ません。様々な場所に滞在することは、私にとっ てとても大きな刺激になります。軽井沢でずっと 運営をしていると、観光客の皆さんは浅間山が綺 麗だとおっしゃいます。しかし、毎日軽井沢にい ますと浅間山が目に入らなくなります。要するに、 毎日同じ場所にいて同じ場所に通っていると、感 動すべきところさえも目に入らなくなってきてし まうのです。そういう意味ではやはり、出張に行っ たり雪山に行ったり、常に新しい場所へ行くこと で感性が刺激されている感覚はあります。 ─ 最近オープンした『OMO(おも)』は、どのよ うな想いから立ち上げたのですか? 都市をリゾートとして捉えようという考えからで す。都市ホテルには二つのマーケットがあり、一 つはビジネス客でもう一つは都市観光客です。今 まで、両者は行動パターンやニーズが違うにも 関わらず、同じホテルの施設とサービスを提供 されていました。私たちがやってみたかった都 市ホテルというのは、都市観光のお客様だけの ニーズに応えるというもので、逆に言うとビジ ネス客は忘れようというものです。ビジネス客 を一旦忘れると、観光客にとっては感動するよ うなサービスが生まれるものだと考えています。
PDFをダウンロード